西口 翔(湘南鎌倉総合病院総合内科)
CASE
患者:78歳,女性。
主訴:首が動いてしまう。
現病歴:1週間前より顔面・頸部が勝手に動くようになった。不随意運動が徐々に四肢まで生じるようになり,発作性で粗大な運動となった。そのため,食事摂取と歩行が困難となり入院となった。
既往歴:肝機能障害(約20年前),2型糖尿病(3年前)。
常用薬:アログリプチン,ラベプラゾール,ウルソデオキシコール酸,フロセミド,スピロノラクトン,ラクツロース,分岐鎖アミノ酸。
バイタルサイン:JCS I-1,体温 36.1℃,血圧 112/60 mmHg,心拍数 96 /分,SpO2 97 % (室内気) ,呼吸数 17回/分。
身体所見:胸部・腹部 特記すべき異常所見なし,四肢 両下腿浮腫あり,直腸診 腫瘤触知せず,便潜血陰性,脳神経学的所見:脳神経系 特記すべき異常所見なし,運動系 Barré徴候両側陰性,指鼻指試験正常,Babinski徴候両側陰性,顔面・頸部 不随意運動あり(動画1),四肢 バリスティックな運動あり,固縮や痙縮なし,歩行は介助で可能,深部反射は全体にやや減弱。
血液検査所見:WBC 5,000/μL(好中球54.8%),Hb 15.8 g/dL,MCV 103.6fL,Plt 9.2×104/µL,PT% 51.8%,APTT 26.5秒,CPK 1,346IU/L,T-Bil 1.8mg/dL,D-Bil 1.1mg/dL,AST 95IU/L,ALT 27 IU/L,LDH 470 IU/L,ChE 154 IU/L,γGTP 20 IU/L,ALP 382 IU/L,TP 5.9g/dL,Alb 3.0 g/dL,BUN 20.8mg/dL,Cre 0.57mg/dL,Na 133mEq/L,K 4.1mEq/L,Cl 99mEq/L,Glu 147mg/dL,HbA1c 6.3%,CRP 0.2g/dL,T-Cho 99mg/dL,NH3 105μg/dL。
頭部MRI:明らかな異常所見なし。
入院後経過:入院後チアプリドを投与したが不随意運動は持続し,クロナゼパム投与したところ,不随意運動は軽度改善した。エコーとダイナミック造影CTにて脾腎シャントが明らかになった。
動画1 顔面不随意運動の身体所見
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Q1 不随意運動は動画1のような所見であった。この身体所見を呈する疾患の治療は,以下の5つのうちどれか?
(1)脳深部刺激療法(DBS)
(2)バルーン閉塞下逆行性経静脈閉塞術(BRTO)
(3)下剤投与
(4)分岐鎖アミノ酸追加投与
(5)抗てんかん薬投与