第2回 医学とはなにかと考えたことがありますか? ──医療の数理化への道 
北風 政史(阪和病院・阪和記念病院 統括院長・総長)

本連載では2012年1月から2014年4月にかけて医学書院の電子ジャーナルサイト「MedicalFinder」に掲載されたエッセイ『内科医の道』を復刻掲載します。さまざま困難を乗り越えて道を切り拓いてきた先達たちが贈る熱いメッセージは,時を経てもその価値は変わりません。内科医人生の道しるべとなる珠玉のエッセイを堪能ください(注:断り書きがない場合,執筆内容,所属などは初出時のものです

北風 政史(執筆時:国立循環器病研究センター臨床研究部) 
初出日:2012/01/06

 

医学部は,理系学部であり,工学部や理学部と並列の位置付けにあることはいうまでもありません。しかし興味深いことに,医学は,物理学・化学やその応用学である流体力学・材料力学とは,異なった学問体系を取っております。それはどのようなことかわかりますか?

 

まず,医学は基礎医学と臨床医学に大別されます。基礎医学は,生物学の人への応用学と考えられ,他の学問と同じように科学的・解析的手法を用いておりますが,臨床医学は,基礎医学からの演繹と臨床経験の統合により成立しています。つまり,内科などの臨床医学は,解析的な基礎医学の成果と観察・臨床経験の集大成である統計学から成立しているのです。臨床医学は,その教科書を見ればわかりますが,生物学のみならず経験則から得られた多くの知見が記載されており,それが実臨床で先生方が診察されるある個人の疾病の多彩な病態に当てはまらないことは自明です。一言でいえば,臨床医学は,その内容が数式化できていないことです。それは,臨床医学は,基礎医学と統計学のキメラだから数式化ができないのです。さらに都合が悪いことに,基礎医学からは,臨床上の病態解明を保証できず,統計学はその成果を個人の医療に還元できないのです。

 

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