第5回 症状と対決するばかりが医師の仕事ではない 
大生 定義(新生病院 名誉院長)

本連載では2012年1月から2014年4月にかけて医学書院の電子ジャーナルサイト「MedicalFinder」に掲載されたエッセイ『内科医の道』を復刻掲載します。さまざま困難を乗り越えて道を切り拓いてきた先達たちが贈る熱いメッセージは,時を経てもその価値は変わりません。内科医人生の道しるべとなる珠玉のエッセイを堪能ください(注:断り書きがない場合,執筆内容,所属などは初出時のものです

大生 定義(執筆時:立教大学社会学部) 
初出日:2012/01/06

 

私にとって,医師の仕事を続けようと思う気持ちの原点は患者さんの笑顔や「ありがとう」という言葉である。医師としてキャリアを積みつつ,それぞれのステージで患者さんから,多くの気づかいと学びをいただいてきた。若い時にはそれに気付かないでいたと思うし,その後も感謝の気持ちはありながらも,無我夢中でやり過ごしていたように思う。ただただ,「医学的な知識や判断を磨いていこう。患者さんからいただいた数々の『ご高配』に応えよう」と思ってきただけだったかも知れない。そんなことで,苦痛を除くことが医師として至上の役割であり,患者さんの呈する訴えや症状を苦痛としてとらえ,出来るだけそれを取り除くこと,あるいは症状を正確に説明することを大切なものとしてきたようだった。でも,最近それは少し違うのではないかと思うようになっている。

 

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