第10回 がん医療のススメ 
堀之内 秀仁(国立がん研究センター中央病院呼吸器内科)

本連載では2012年1月から2014年4月にかけて医学書院の電子ジャーナルサイト「MedicalFinder」に掲載されたエッセイ『内科医の道』を復刻掲載します。さまざま困難を乗り越えて道を切り拓いてきた先達たちが贈る熱いメッセージは,時を経てもその価値は変わりません。内科医人生の道しるべとなる珠玉のエッセイを堪能ください(注:断り書きがない場合,執筆内容,所属などは初出時のものです

堀之内 秀仁(執筆時:国立がん研究センター中央病院呼吸器腫瘍科呼吸器内科) 
初出日:2012/02/03

 

分子標的薬がもたらすパラダイムシフト 

ここ数年,新しい治療薬とともに,その治療薬が効果を示すか事前に判別する検査も,保険承認を受けるということが増えています。その背景には,治療薬の開発手法の劇的な変化があります。従来は,培養がん細胞にさまざまな候補物質を投与して,細胞の増殖を抑制した薬剤を選んでいました。腫瘍の性状について,分子生物学レベルの理解が深まるにつれ,先にがん細胞の弱点となる分子レベルの標的(分子標的)とその検査方法が明らかにされ,その分子標的に適した薬剤が創薬されることが一般的になってきているのです1)。興味深いことに,この分子標的は肺がん,乳がんなど解剖学的な腫瘍の概念を超えて,複数のがん種で発見されることがあります2)。つまり,ひとつの分子標的薬が複数のがんで効果を示すことがあり,その効果は従来の薬剤を上回ることも多いのです。解剖学的な位置もさることながら,標的分子に基づいてがんを分類・治療することが当たり前の時代が近づいています。

 

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