本連載では2012年1月から2014年4月にかけて医学書院の電子ジャーナルサイト「MedicalFinder」に掲載されたエッセイ『内科医の道』を復刻掲載します。さまざま困難を乗り越えて道を切り拓いてきた先達たちが贈る熱いメッセージは,時を経てもその価値は変わりません。内科医人生の道しるべとなる珠玉のエッセイを堪能ください(注:断り書きがない場合,執筆内容,所属などは初出時のものです)
木村 琢磨(執筆時:国立病院機構東埼玉病院総合診療科)
初出日:2012/02/24
初老の男性A氏がB病院の受付で言った。
「私は若い頃,こちらの内科の先生にお世話になり命拾いをしましてね。幸いその後の数十年間,医療機関に掛からずに過ごしておりましたが,最近あちこちにガタがきまして,まずは内科の先生にいろいろ診ていただきたいのですが」
年輩の看護師が嘆くように言う。
「あいにく当院に内科はもうございません。ここ数年,全国的に内科医は減少しており,当院でも内科医を絶滅危惧種のように守ってまいりました。昨年,最後の一人になった長老の内科医が当院を去り,当院では内科は無い科になりました」
「内科に掛かりたい患者がいるのに,内科が無い科になってしまったとは」とA氏は呟きながら病院を後にした。