第27回 待合室の椅子に座ることの勧め 
山中 寿(山王メディカルセンター 院長)

本連載では2012年1月から2014年4月にかけて医学書院の電子ジャーナルサイト「MedicalFinder」に掲載されたエッセイ『内科医の道』を復刻掲載します。さまざま困難を乗り越えて道を切り拓いてきた先達たちが贈る熱いメッセージは,時を経てもその価値は変わりません。内科医人生の道しるべとなる珠玉のエッセイを堪能ください(注:断り書きがない場合,執筆内容,所属などは初出時のものです

山中 寿(執筆時:東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター 所長) 
初出日:2012/04/20

 

私は時々,外来待合室の椅子に座っている。もちろん白衣を着ずに普通の服装で座っているが不思議なことに誰も気が付かない。一人のオジサン患者として待合室に同化しているといろいろなことがわかる。時折姿を見せる病院事務職や看護師の行動に「なかなかやるじゃん」と思うこともあるが,「ありゃいかんな,注意せねば」と思うこともある。患者さんたちの会話も面白い。われわれの施設はリウマチ性疾患を扱う専門施設なので,慢性疾患の患者さんが多い。仲の良さそうな3人の女性患者さんが盛んに情報交換をしている。「あの先生が言いにくそうに話すときは気を付けたほうが良いわよ」われわれの心は百戦錬磨の患者さんには見透かされている。口コミは強力である。そういえば次回の診察日を患者さんが指定してくるのは待合室会議のスケジュールを決めるためか,いやいや診察が終わったらあの3人はランチにでも行くのだろうか。

 

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