第29回 自分の死を看取った患者 
秋下 雅弘(東京都健康長寿医療センター)

本連載では2012年1月から2014年4月にかけて医学書院の電子ジャーナルサイト「MedicalFinder」に掲載されたエッセイ『内科医の道』を復刻掲載します。さまざま困難を乗り越えて道を切り拓いてきた先達たちが贈る熱いメッセージは,時を経てもその価値は変わりません。内科医人生の道しるべとなる珠玉のエッセイを堪能ください(注:断り書きがない場合,執筆内容,所属などは初出時のものです

秋下 雅弘(執筆時:東京大学医学部附属病院老年病科) 
初出日:2012/05/11

 

認知症終末期の胃瘻問題に代表されるように,高齢者に対する終末期の医療の在り方が議論になっています。医療制度や社会環境が障壁となり,必ずしも患者さん本人にとって満足できる,尊厳のある最期とはいかないケースも多いのが現実です。そのような悩みを抱えるわれわれ医師に対して,一つの理想形ともいえる鮮やかな最後を遂げられた患者さんをご紹介します。

患者は近藤裕さん(享年82歳)で,実名も,ご本人の生前の意思によるものです。サイコセラピストとして米国で長年活躍され,牧師でもいらっしゃいます。以下は,近藤さんの絶筆となった『自分の死を看取る―天国からのメッセージ』(いのちのことば社発行)に私が主治医として寄せた文章の原文を引用したものですが,高齢期を迎えた近藤さんが迫りくる死にどのように向き合っておられたかはわかると思います。近藤さんの考え方を詳しく知りたい方は,ぜひ100冊以上ある著書(人生のゴールの一つであった年齢以上の著作,いわばエイジシュートも見事達成されました)から1冊でも手に取ってお読みください。

 

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