本連載では2012年1月から2014年4月にかけて医学書院の電子ジャーナルサイト「MedicalFinder」に掲載されたエッセイ『内科医の道』を復刻掲載します。さまざま困難を乗り越えて道を切り拓いてきた先達たちが贈る熱いメッセージは,時を経てもその価値は変わりません。内科医人生の道しるべとなる珠玉のエッセイを堪能ください(注:断り書きがない場合,執筆内容,所属などは初出時のものです)
中川 義久(執筆時:天理よろづ相談所病院循環器科)
初出日:2012/06/08
ある日の集中治療室でのベッドサイドの風景です。私が,2日前に急性心筋梗塞で入院した患者さんの病状を家族に説明しています。人工呼吸器とIABPが作動しています。
「懸命に治療していますが効果は芳しくありません。現在のところ見通しは大変きびしいと思います」
「そうですか。父は高齢ですが,これまでに大病を患ったこともなく元気だったのですが…」
患者さんの長女が答えます。