本連載では2012年1月から2014年4月にかけて医学書院の電子ジャーナルサイト「MedicalFinder」に掲載されたエッセイ『内科医の道』を復刻掲載します。さまざま困難を乗り越えて道を切り拓いてきた先達たちが贈る熱いメッセージは,時を経てもその価値は変わりません。内科医人生の道しるべとなる珠玉のエッセイを堪能ください(注:断り書きがない場合,執筆内容,所属などは初出時のものです)
鈴木 秀和〔執筆時:慶應義塾大学医学部内科学(消化器)〕
初出日:2012/07/27
内科医は,病気の予防から,診断,治療まで,すべてを担当することができます。言い換えると,医療における入口から出口まで,総合的に担当することが課せられているともいえます。最近の医学・医療の進歩により,検体検査や画像診断から豊富なデータを得られるようになりましたが,それらは,患者さんの人生の一時点における身体の情報の一部分,つまり,一点を止めてとらえた一所見でしかありません。人間は,まさに生きているわけで,常に,運動,情動,代謝などの活動を行っています。内科医の診るべき相手は,患者さんという一人の人間であり,それは,一瞬たりとて止まることのない動的な対象です。それゆえ,内科医は表情をみて,振る舞いをみて,話を聞いて,変化するデータをみて,経験や知識や,さらには最近のエビデンスなどの情報を駆使し,最後には動物的な勘も動員して,診断し治療する必要があるのです。
長年,「がん」で闘病する患者さんを診てきた医師は,新しい治療に期待を膨らませ,あらゆる方策のなかから何を選ぶのがベストかを考えるとともに,進行がんになる前になんとかすべきであると,一次予防,二次予防の重要性をも痛感し,基礎・トランスレーショナル・臨床医学を徹底的に勉強して,病態解明に挑み,新しい治療を開発し,有効な予防点を探索しようとします。「医」の究極のテーマは,もちろん人類の健康と幸福であり,このためには莫大な努力が必要になります。