本連載では2012年1月から2014年4月にかけて医学書院の電子ジャーナルサイト「MedicalFinder」に掲載されたエッセイ『内科医の道』を復刻掲載します。さまざま困難を乗り越えて道を切り拓いてきた先達たちが贈る熱いメッセージは,時を経てもその価値は変わりません。内科医人生の道しるべとなる珠玉のエッセイを堪能ください(注:断り書きがない場合,執筆内容,所属などは初出時のものです)
井上 和彦(執筆時:川崎医科大学総合臨床医学)
初出日:2012/11/30
最近,胃がんリスク評価法として少しですが脚光を浴びつつある“ABC分類”は,1995年に山陰の松江赤十字病院人間ドックで胃の健康度評価として実践を開始しました。その導入の経緯を振り返ってみます。
私は1993年広島大学第一内科から島根県の松江赤十字病院に派遣されましたが,その当時,山陰ではヘリコバクター・ピロリ(Hp)の臨床は全く行われていませんでした。恩師の一人である春間賢先生(川崎医科大学消化管内科学教授)の厚意で広島大学からラピッドウレアーゼテストをたくさん送ってもらい,消化性潰瘍の患者さんを中心にHpの診断,除菌治療を開始しました。