本連載では2012年1月から2014年4月にかけて医学書院の電子ジャーナルサイト「MedicalFinder」に掲載されたエッセイ『内科医の道』を復刻掲載します。さまざま困難を乗り越えて道を切り拓いてきた先達たちが贈る熱いメッセージは,時を経てもその価値は変わりません。内科医人生の道しるべとなる珠玉のエッセイを堪能ください(注:断り書きがない場合,執筆内容,所属などは初出時のものです)
柳田 素子(執筆時:京都大学医学研究科腎臓内科学)
初出日:2012/10/12
医学の教科書が改訂ごとに分厚くなるのと比例して,若手医師が知っておかなければいけないことは増える一方です。その知識が日々の経験に裏付けられ,自信がついてくる医学部卒後4〜5年の成長は素晴らしいものがあります。
そんななかで臨床の現場を離れ,研究生活を送ることには抵抗があるという話をよく聞きます。私自身,卒後研修の間は臨床がとても楽しかったので,その気持ちはよくわかります。しかしその一方で,経験を積めば積むほどに,現実の医療の限界に直面します。どんなに経験豊かな医師でも治せない病気はあるのです。