本連載では2012年1月から2014年4月にかけて医学書院の電子ジャーナルサイト「MedicalFinder」に掲載されたエッセイ『内科医の道』を復刻掲載します。さまざま困難を乗り越えて道を切り拓いてきた先達たちが贈る熱いメッセージは,時を経てもその価値は変わりません。内科医人生の道しるべとなる珠玉のエッセイを堪能ください(注:断り書きがない場合,執筆内容,所属などは初出時のものです)
泉 並木(執筆時:武蔵野赤十字病院副院長)
初出日:2012/11/16
阿川佐和子さんの『聞く力』(文春新書,2012)という本がベストセラーになっている。この本には心を開く35のヒントが書かれている。なるほど,と思う記述が多く,医師としても勉強になる。特段の取り引きがないのに,他人が納得したり説得に応じたりするのは,自分の心の中で理解ができたと思える部分があるからなのだろう。
研修医や若手医師は,病院の中で覚える技術や知識が多くて多忙で大変なことと思う。患者の言うことをいちいち聞いている時間などないという気持ちはよく理解できる。読者の若手医師は,患者に検査や治療の説明をして同意を得るよう上級指導医から指示されることが多いであろう。なんとか患者を説得して,同意を得られねば上級医の機嫌を損ねてしまうと焦る医師が多いのも,よく目にしている。患者や家族を説得するためのムンテラの仕方を勉強したい医師は沢山いることだろう。