本連載では2012年1月から2014年4月にかけて医学書院の電子ジャーナルサイト「MedicalFinder」に掲載されたエッセイ『内科医の道』を復刻掲載します。さまざま困難を乗り越えて道を切り拓いてきた先達たちが贈る熱いメッセージは,時を経てもその価値は変わりません。内科医人生の道しるべとなる珠玉のエッセイを堪能ください(注:断り書きがない場合,執筆内容,所属などは初出時のものです)
小林 健二(執筆時:聖路加国際病院附属クリニック聖路加メディローカス一般内科)
初出日:2012/11/30
「百聞は一見にしかず」と言いますが,自分の目で見るということはとても大切なことであると常々思います。特に,医師の考え方,態度,姿勢などはテキストを読んだだけではなかなか身につかず,ロールモデルを持ち,一緒に働きながら学ぶことが重要であると思います。私のそんな経験をお話ししましょう。
私が米国で内科レジデントの後に消化器内科フェローとしてサブスペシャルティの研修を受けるか迷っていたとき,日本の先輩,友人は口をそろえて「消化器なら日本が一番なのに,わざわざアメリカで研修を受けなくても…」と帰国を勧めました。当時,内科の研修内容でも日米の差を痛感していた私は,ならば米国の消化器内科トレーニングがどうであるのかを自分の目で確かめたくなりました。何をもって「一番」なのか。日本の内視鏡のレベルが高いことは確かですが,消化器内科=内視鏡ではないはずです。そう思ったへそ曲がりの私は,先輩,友人たちのアドバイスを聞かずに消化器内科フェローへと進むことにしました。