本連載では2012年1月から2014年4月にかけて医学書院の電子ジャーナルサイト「MedicalFinder」に掲載されたエッセイ『内科医の道』を復刻掲載します。 さまざまな困難を乗り越えて道を切り拓いてきた先達たちが贈る熱いメッセージは,時を経てもその価値は変わりません。内科医人生の道しるべとなる珠玉のエッセイを堪能ください(注:断り書きがない場合,執筆内容,所属などは初出時のものです)
国兼 浩嗣(執筆時:横浜市立市民病院緩和ケア内科)
初出日:2013/11/08
患者の気持ちを理解しようなんて,おこがましいことかもしれない。それでも時には自分が患者になったつもりで想像することを勧める。
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自分もがんになるかなと以前から思ってはいたよ。父親も胃がんの手術を受けて最期は食道がんだったしね。でもまさか今とは考えなかった。大腸がんが腹膜や肝臓に広がっているんだって。
手術からもうじき二年か……。抗がん剤も最初はどうなることかと思ったけど,一回熱出して入院したくらいで,主治医は「まあ順調ですよ」と言ってくれている。「抗がん剤がよく効いています」と言われた時は,「もしかしてがんが治るかも」と思ったけどな。治療を始めるときに「治ることはありません」と説明されたけど,私の主治医はいつも最初に悲観的なことを話すからね。手術の前に「このような危険があります」と言われた時も結局何も起こらなかったし。