第1回 ChatGPT vs 長澤将、開幕! 最良のプロンプトは何だ?

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執筆長澤 将(東北大学病院 腎臓・高血圧内科)

 ChatGPTは医師より正診率が高い――。そんな論文がJAMAの姉妹紙に掲載されたのは2024年10月のことです1)。これを聞いた私は、すぐに自分も試してみたくなりました。しかし、実際の患者さんのデータを生成AIに入力するのは慎重になる必要があり、臨床研究などの手順を踏むべきでしょう。
 そんな時、「良い題材」があることを思い出しました。2023年に執筆した書籍『Dr.長澤印 輸液・水電解質ドリル』です。この本では架空の20症例を作成し、各症例に2~3題の臨床問題をつけて「ドリル」の体裁にしています。

 さて、それでは早速ChatGPTに症例を投げて……といきたくなりますが、ことはそう簡単ではありません。なぜなら、生成AIから有効な回答を得るには「良いプロンプト」を入力してあげる必要があるからです。
 というわけで、まず今回は、書籍の「Case1 嘔吐・下痢を伴う低Na血症の70歳代女性」を題材に、この「良いプロンプト」を探っていきたいと思います。今回は2025年8月7日にOpenAI社により公開され、無料アカウントでも制限付きで利用できる「GPT-5」を用いています。GPT-5の回答を見る前に、ぜひ皆さんもご自身で回答を考えてみてください。 


症例の情報・問題

70代後半、女性

現病歴:13年前から高血圧症で近医にて加療中であった。4日前から孫が嘔吐下痢症となって看病していたが、昨日から自分も嘔吐・下痢が出現し、近医受診して点滴を受けた。夜間になって同居している娘がいつもと様子が違うということで連れだって外来受診し、ソリタ-T3 1,500mLの輸液を受けた。頭部CTなどで異常はないものの、血清Na117mEq/Lでありコンサルトとなった。

身体所見:148cm、38kg。血圧 80/50mmHg、心拍数 112回/分・整、体温 36.1℃、呼吸数 14回/分、SpO2 97%(室内気)。JCS 1。
心雑音を認めない。肺雑音を認めない。下腿浮腫は明らかではない。

生活歴:飲酒歴;機会飲酒。喫煙歴;なし。妊娠・出産歴;4妊4産。ADL;完全自立。
家族歴:特記事項なし
既往歴:13年前から高血圧症を指摘されて加療。心血管疾患の既往なし。
内服薬:イルトラ配合錠

血液検査:Na 117mEq/L、Cl 97mEq/L、K 4.1mEq/L、Cr 0.67mg/dL、UA 5.7mg/dL、BUN 21mg/dL、Alb 4.1g/dL、Hb 12.1g/dL 
画像検査:心胸比(CTR)47%


Q1 この患者の病態を知るために必要な検査はどれか?
体重測定

尿電解質
血液ガス
血糖測定 

Q2 この患者の診断はどれか?
低張性脱水

SIADH(抗利尿ホルモン不適合分泌症候群)
希釈性低Na血症
偽性低Na血症
CSWS(中枢性塩類喪失症候群) 


それでは、まず何も考えずにプロンプトを投げてみましょう。ここでは字数制限もつけてみることにします。

プロンプト何も考えずに投げてみる

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