第66回 特発性細菌性腹膜炎とは何なのか

執筆:伊東 完(東京医科大学茨城医療センター総合診療科)
監修:岡本 耕(東京医科歯科大学病院 感染症内科・感染制御部)

 

Keywords:グラム陰性桿菌,嫌気性菌,肝硬変,特発性細菌性腹膜炎,第三世代セフェム系抗菌薬,セフトリアキソン(CTRX),セフォタキシム(CTX)

 

Q. 特発性細菌性腹膜炎で嫌気性菌のカバーが必須でない理由を教えてください!  

A. 腸内細菌目による単一菌感染が多く,腹水も好気的環境だからです。ただし,免疫不全が高度な場合などでは嫌気性菌までカバーすることが推奨されています。

 

多少の議論はあるものの,腹腔内感染症ではグラム陰性桿菌と嫌気性菌のカバーを意識すると第63回で述べましたが,特発性細菌性腹膜炎に関して,米国肝臓病学会のガイドラインなどをみると,市中発症の場合は第三世代セフェム系抗菌薬の使用が推奨されています注1。これまでみてきた通り,セフェム系抗菌薬では基本的に横隔膜から下の嫌気性菌をカバーしきれません。特発性細菌性腹膜炎は腹腔内感染症なのに,なぜ嫌気性菌をカバーしなくても大きな問題になりにくいのでしょうか?

 

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