執筆:伊東 完(東京医科大学茨城医療センター総合診療科)
監修:岡本 耕(東京医科歯科大学病院 感染症内科・感染制御部)
Keywords:感染性腸炎,海外渡航歴,マラリア,レプトスピラ症,細菌性腸炎,糞便検査,アジスロマイシン(AZM),キノロン耐性菌,寄生虫,感染症法
Q. 海外渡航歴がある場合の感染性腸炎への対応を教えてください!
A. 基本的対応は海外渡航歴がない場合と同じです。ただし,マラリアなどの可能性には注意が必要です。
旅行者下痢症への対応の大枠は,日本国内の市中で発生する感染性腸炎と大きく変わりません。「感染性腸炎を疑ったら,まず心筋梗塞などの致死的疾患を除外する」と前回述べましたが,旅行者下痢症でも同様に致死的になりうる疾患の可能性を念頭に置くことが重要です。ただし,マラリアやレプトスピラ症など幅広い疾患の可能性を考慮しないといけない点が国内の市中で発生する感染性腸炎とは異なります注1。旅行者下痢症のほとんどが現地到着後2週間以内に起こり,数日程度で改善しますが,臨床経過が矛盾しないか確認したいところです。