執筆:伊東 完(東京医科大学茨城医療センター総合診療科)
監修:岡本 耕(東京科学大学病院 感染症内科・感染制御部)
Keywords:Listeria monocytogenes,食肉加工品,乳製品,細胞性免疫障害,新生児,妊婦,高齢者,アンピシリン(ABPC)
Q. リステリア感染症を診断するうえでの注意点を教えてください!
A. 高齢がリスクになりますが,50歳と比較的若いうちから発生率が上がります。50歳前後の髄膜炎患者でも鑑別診断に入れるべきです。
今回扱うのは,「LLMNSS」の2つ目の「L」,リステリアです(第100回記事参照)。グラム陽性桿菌であるListeria monocytogenesのことを主に指しており,ここで,なぜ菌名に「単球」(monocyte)が出てくるのか疑問に思われる読者の方がいらっしゃるかもしれません。細胞性免疫障害では細胞内に感染する病原体が関係しやすいというお話を以前しましたが,リステリアの場合は単球に感染しやすいからです。細胞性免疫障害のある患者がリステリアに汚染された肉や乳製品に曝露されると,それが腸管や血流に入り,やがて単球に感染を起こします。この感染した単球が,脳の毛細血管に接着し,くも膜下腔に侵入した結果,髄膜炎を起こしやすいというメカニズムです注1。なお,マニアックですが,リステリアによる髄膜炎は脳底部(中脳や延髄)に病変をつくりやすいことで知られます。また,髄膜炎のイメージばかりが強いですが,実際の感染症としては菌血症が最多です。