執筆:伊東 完(東京医科大学茨城医療センター総合診療科)
監修:岡本 耕(東京科学大学病院 感染症内科・感染制御部)
Keywords:ノカルジア,弱抗酸性,キニヨン染色,放線菌,アクチノミセス,細胞性免疫障害,肺病変,中枢神経病変,ST合剤,菌種同定
Q. どのようなときにノカルジア感染症を疑うのかを教えてください!
A. 細胞性免疫障害を背景とした肺病変や中枢神経病変で鑑別に挙げるとよいでしょう。
前回まで結核菌や非結核性抗酸菌を扱いましたが,そもそも「抗酸菌」とは何を指すのでしょうか? これはチール・ネルゼン染色に含まれる塩酸アルコールなどの酸で脱色されない細菌を指しており,厳密には結核菌や非結核性抗酸菌に加えて,ハンセン病の原因となるMycobacterium lepraeが含まれます注1。実は,酸で脱色されにくい細菌はほかにもおり,その代表が今回扱うノカルジアです。ノカルジアは,塩酸アルコールを使うと脱色されるのですが,代わりに0.5%硫酸アルコールを使うと脱色されません。このような性質を「弱抗酸性」と呼び,硫酸アルコールを用いた抗酸菌染色をキニヨン染色と呼びます。