第10回(後編)「医療」×「文学」

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平野啓一郎(小説家)
平島 修(徳洲会奄美ブロック総合診療研修センター 名瀬徳洲会病院内科)
※「総合診療」誌連動企画! 本対談は「総合診療」34巻11号(2024年11月号)pp1327-1335にダイジェスト版を掲載しています。本連載では3回に分けて完全版を掲載いたします。

本心は自らではなく 社会がつくるもの? 
臨床現場において,患者の社会背景が複雑,あるいは有効な意思決定者が不在など,特殊な個別性に悩む可能性が最も高いのが,総合診療医だと思われる。いわゆる対応困難事例に対して,一見,医学とはかけ離れた内容であっても,患者本人や家族の人生といったその背景にある文脈を理解するという意味で,「文学」が総合診療医に与える影響は大きい。
本対談では,幅広いジャンルで深い人間ドラマや哲学的なテーマの作品を次々と世に送り出す第一線の小説家・平野啓一郎氏をお招きし,2024年11月公開映画の原作『本心』の内容をはじめ,さまざまな話を伺った。(平島 修)

 

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不安を前提に接してもらえると患者は嬉しい 


平野 患者と医者が対等に話す上で,最も大きな違いは,患者の方が不安を抱えていることです。話をよく聞いてもらい,自分の決断を尊重してもらえることは非常に重要であるものの,医者と患者が持っている情報量は全く違います。さまざまな可能性を提示してもらい,最終的には,どこかの方向に背中を押してもらいたい気持ちが相当程度あるはずです。不安があることを前提に接してもらえると,患者も安心できるのではないでしょうか。

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