執筆:谷口 智宏(県立広島病院 総合診療科・感染症科部長)
執筆協力:米本 仁史(大和高田市立病院 感染症内科部長)
(症例編はこちら)
解説:バルトネラ感染症
歴史
19世紀後半にペルーの高地での鉄道建設において、労働者が原因不明の高熱と貧血で多数死亡し、地名からオロヤ熱と呼ばれた。1885年にペルーの医学生カリオンが、ペルー疣の浸出液を自らの皮下に接種したところ、オロヤ熱に罹患し死亡するという悲劇が起こり、カリオン病の名がついた1)。1909年にBartonが、カリオン病(オロヤ熱)患者からヒト赤血球に付着した微生物を報告し、1913年にJAMA誌に記載された1)。1926年に野口英世が、カリオン病とペルー疣から同一の細菌を分離し、両疾患が同一の病原体であると証明した2)。基準種のB. bacilliformisは、南米アンデス山脈に限局していたため当初は注目されなかったが、1990年代初頭に後天性免疫不全症候群(AIDS)患者から、当時Rochalimaea属に分類されていた細菌が病原体と確認されて以降注目を集め、研究が飛躍的に進んだ1)。
Bartonella属は、Brucella属とともにAlphaproteobacteria綱に属し、Bartonella科を構成する2)。ゲノム解析でもBrucella melitensis染色体の縮小版を保持することが示唆された1)。古人骨の歯髄DNA解析から、B. henselaeやB. quintanaが古くからヒトに感染していた可能性も示されている1)。