ステップ編で紹介した通年性アレルギー性鼻炎に対する小青竜湯(しょうせいりゅうとう;ツムラNo.19)の有効性を示したDB-RCT1)におけるサブグループ解析をみると、鼻炎の病型では「くしゃみ発作・鼻汁型」で小青竜湯の効果が有意差を持って示されていますが、「鼻閉型」や「くしゃみ発作・鼻閉型」では有意差がありませんでした。これはホップ編、ステップ編で解説した水様性鼻汁やくしゃみが小青竜湯の投与目標となることと一致しています。また体格では「ふつう」と「筋肉質」、顔色では「普通から色白」のタイプで小青竜湯の効果に有意差を認めています。一方、冷えと関連がある顔色が「蒼白」や「手足が冷える」では有意差が出ていません。
これらの結果を漢方医学的に解釈すると、鼻閉は漢方医学的には熱の病態と考えられることから、鼻閉が目立つ場合には小青竜湯は適応になりません。また顔色蒼白や手足の冷えを認める場合は、より冷えが強い病態と考えて対応する必要があると考えます。ジャンプ編では、小青竜湯のさらなる活用として、次の一手、鑑別処方を解説します。
◆小青竜湯から次の一手
●冷えが強い場合
小青竜湯を投与しても水様性鼻汁が改善しない場合や、四肢の自覚的な冷えや他覚的な冷感がある場合はより冷えが強い病態と考えて、温める作用のある附子(ぶし)を併用します。小青竜湯に附子を併用すると、全身に冷えがある場合に用いる麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう;No.127)の構成生薬3つ〔麻黄(まおう)・附子・細辛(さいしん)〕がすべて含まれることになります(図)。よって、小青竜湯にブシ末を追加する、もしくは小青竜湯と麻黄附子細辛湯を併用するとよいでしょう。ただし、小青竜湯と麻黄附子細辛湯の併用は麻黄の重複により、麻黄の副作用が生じやすくなるので注意が必要です〔Q39 麻黄の副作用(1)、Q40 麻黄の副作用(2)参照)。