第10回 補中益気湯(ホップ編)―「全身倦怠感=補中益気湯」と決めつけない! 
吉永 亮(飯塚病院東洋医学センター漢方診療科)

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今日でも、活気がある、気のせい、気が滅入るなどと「気」という文字が使われています。このような目に見えない「気(き)」を漢方では生体エネルギーとしてとらえ、気の量が不足した病態を「気虚(ききょ)」といいます。補中益気湯(ほちゅうえっきとう;ツムラNo.41)は中(ちゅう:消化吸収能という意味)を補い、気を益(ま)すという意味で、気虚に対する代表的な漢方薬です。現代では、補中益気湯はさまざまな要因(過労、感染症、悪性腫瘍など)により生じる全身倦怠感に対して用いられています。また、全身倦怠感以外にも気虚の症状として、食欲不振、風邪をひきやすい、日中の眠気などがあります。これらの一般的な気虚の症状に加え、四肢がだるい、眼に力がない、声が弱々しいなど、筋トーヌスの低下を示唆する徴候があれば補中益気湯がよい適応になります。これらは、患者の普段の状態をよく知るプライマリ・ケア医だからこそ気付くことができる所見ともいえます。

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