半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう;ツムラNo.16)は、器質的異常はないものの「何かが喉につまった感じがある」という咽喉頭異常感症といわれる病態に用いられる漢方薬です。古典には「喉に炙(あぶ)った肉片(咽中炙臠:いんちゅうしゃれん)があるように感じる場合は半夏厚朴湯の適応である」とされてきました。また、江戸時代の漢方医(浅田宗伯)はそれを「梅核気(ばいかくき:梅干しの種が引っかかっているような異物感)」と表現しています1)。漢方治療では、「検査で異常はありませんから気のせいです」というのではなく、文字通りに「気(き)」の異常として、生体のエネルギーである気の循環がスムーズでない状態、すなわち、気鬱(きうつ)と考えて治療します。