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執筆:大塚勇輝(岡山大学病院 総合内科・総合診療科 助教)
みなさん、こんにちは。岡山大学病院で総合診療医をしている大塚勇輝と申します。
この記事を読まれているのは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後の各種症状(いわゆる「コロナ後遺症」)、あるいは疲労感・倦怠感(体のだるさ)に困っている患者さんを診ている医師・医療者ではないかと思います。場合によっては、患者さん本人やご家族もおられるかもしれません。
総合診療の視点が重要となる「倦怠感」
私は、臓器に縛られず患者さんを全人的に診療する総合診療医として、なかでも、はっきりとは見えにくく、検査で異常を捉えることが難しい症状・徴候(medically unexplained symptoms:MUS)の患者さんを診ることができればと、日々、診療・研究に勤しんでいます。総合診療外来には、多種多様な訴えで患者さんが来院されますが、その最たるものが「倦怠感」ではないかと考えています。
倦怠感は、検査異常を伴わず客観視や定量化が難しいことが多い一方で、その原因となる鑑別疾患は全身の臓器系統にわたります(図1)1, 2)。内科的疾患だけではなく、整形外科あるいは脳神経外科的な疾患、さらには精神疾患・心理的問題に起因するケース、家族や周囲の環境といった社会的要因によって生じているケースも少なくありません。臨床推論あるいは診断医(diagnostician)の視点、患者を全人的に捉える家庭医としての視点、あるいは、原因不明な場合でも見放さないという不確実性の観点からも、「倦怠感」は総合診療医の果たせる役割が大きい症状と考えています3)。
図1|「倦怠感」の原因となる疾患と分類(文献1, 2に基づき作成)
コロナ後遺症の最多の症状「倦怠感」
さて、COVID-19が日本で流行し始めたのは、ちょうど私が総合診療医としてレジデントになった頃のことでした。急性期のCOVID-19患者の病棟診療を行い、また外来診療を通じて周辺医療機関の先生方と情報交換するなかで、原因不明の症状がCOVID-19罹患後も遷延するケースが多数存在すること、そして、それに対応できる医師が限られていることを知りました。こうした状況が社会問題化しつつあることをニュースなどでも見聞きし、総合診療医としてできることがあるだろうと、当院の「コロナ・アフターケア(CAC)外来」の設立に関わることになりました4)。
岡山大学病院の「CAC外来」は2021年2月、大塚文男教授が率いる総合内科・総合診療科の中に設立され、丸5年が経ちました5)。当時はコロナ後遺症診療を行える医療機関が限られるなか、困っている患者および医療者の受け皿となるべく、関東の聖マリアンナ医科大学病院に次いで、西日本の公的医療機関としては初めて開設されました。CAC外来では、大学病院ならではの各臓器専門科との連携や集学的な検査体制を活かした診療を行っています。一方で、「アフターケア」という名称には、狭義の後遺症だけでなく幅広く症状に対応する、という意味が込められています。一概に後遺症と言っても幅広く、われわれ総合診療医はCOVID-19 罹患後の直接的・間接的な影響において、何らかの症状が持続・残存する狭義のコロナ後遺症(long COVID)の他に、COVID-19 罹患を契機に潜在体質・病態が顕在化するパターンや、COVID-19 流行下で発生する後遺症類似の他病態まで含め、包括的に対応する必要があるだろうと考えています6)。
図2|岡山大学病院「コロナ・アフターケア(CAC)外来」におけるコロナ後遺症の症状と人数
(2021年2月15日〜2026年1月30日)5)
CAC外来の患者さんは、すべて地域の他院からの紹介受診です。これまでに約1,300人の患者さんを診てきましたが、なかでも最も多い症状は「倦怠感」です7)(図2)。CAC外来の60%以上の患者さんが倦怠感を訴えており、特にオミクロン株の流行以降は頭痛・睡眠障害・呼吸困難感と並んで増加傾向にあります8)。また、海外のどの報告をみても、やはり倦怠感がCOVID-19罹患後に遷延する症状の最多を占めています9)。現在では、ワクチンや治療薬が開発され、徐々にCOVID-19の罹患率・重症化率は減ってきました。しかし、特に若年者や、軽症でも後に倦怠感をきたすケースは少なくなく、依然としてCAC外来を多くの患者さんが紹介受診しています。
『診療の手引き』でも十分ではない「倦怠感」
現在では、『COVID-19 診療の手引き』の別冊「罹患後症状のマネジメント」10)が、厚生労働省から発出されています。コロナ後遺症のマネジメントについても、一定の見解が得られるようになっています。
しかしながら、この手引きで取り上げられているのは呼吸器症状、循環器症状、嗅覚・味覚症状、神経症状、精神症状、痛み、皮膚症状であり、最多の症状である「倦怠感」へのアプローチについては記述が十分とは言えません。従来株の頃から現在の変異株に至るまで一貫して最多症状であるにもかかわらずです。加えて、前述のとおり、倦怠感は検査異常を伴わず客観視や定量化が難しく、鑑別疾患は全身・多臓器にわたるなど、診療に難渋する症状です。COVID-19罹患後の倦怠感への対応が、世界的な課題になっています。
岡山大学病院「コロナ・アフターケア外来」の取り組み
CAC外来では、特に初診では時に1時間以上にわたる対面診療を基本としています。所属医師の多様なバックグラウンドを活かし、ほぼ毎週カンファレンスを行うなど、一丸となって診療に当たってきました。また、大学病院が行うべき使命として、学内外の各部門とも連携しながら臨床研究や学生・研修医の教育に取り組み、学会活動や論文発表、メディアなどを通じた外部発信も積極的に行っています。これまでの当科の研究業績は当院ウェブサイトにまとめていますが、筆者は倦怠感に関連する検査項目としてのフェリチン11)や補体12)、亜鉛13)などとの関連や、性腺系やGH-IGF-I系を中心とした内分泌系との関わり14,15,16)、既存の疲労・倦怠感マーカーの変化17)などについて仲間とともに研究を行い、科研費や各種助成金といった研究費の獲得にも取り組んできました。
そこで本連載では、私たちのこれまでの診療・研究の経験を交えつつ、それぞれ異なるバックグラウンドをもつ担当医が、どのように「倦怠感」に向き合い、何を考えながら診療を行っているのか、その“頭の中”を紐解くことができればと考えています。執筆予定は以下のとおりです。お付き合いのほど、どうぞよろしくお願いします。
【今後の掲載予定】※内容や掲載順は変更となる可能性があります。
第1回:なぜ「倦怠感」が重要か―連載にあたって(大塚勇輝)
第2回:<総論>総合診療医にとってのコロナ後遺症との向き合い方(大塚文男)
第3回:コロナ後遺症という医療の不確実性に向き合う(徳増一樹)
第4回:倦怠感に隠れた他疾患の鑑別と内分泌的視点での研究(中野靖浩)
第5回:患者中心の医療の方法を用いたコロナ後遺症への対応(横田雄也)
第6回:漢方で考えるコロナ後遺症(植田圭吾)
第7回:リハビリテーション視点での介入(大野洋平)
第8回:仕事への影響と就労支援(松田祐依)
第9回:ウイメンズヘルス、思春期、精神症状など(櫻田泰江)
第10回:若手/専攻医の視点から入院症例を経験して(副島佳晃)
(次回に続く)
※5月下旬配信
【文献】
1)大塚文男, 他:総合内科診療に潜む内分泌代謝疾患.日内会誌110(3) : 486-491, 2021
2)片岡仁美:ひと目でわかる—疲労・倦怠感at a glance! 総合診療30(7) : 798-799, 2020
3)大塚勇輝, 大塚文男:倦怠感—総合診療でのアプローチ. 片山 皓太, 徳増 一樹(編):COVID-19罹患後症状の実態—現場の医療者はどう患者に向き合っているか?, 総合診療 36(2):151-155, 2026
4)Otsuka Y, Otsuka F, et al:Clinical characteristics of Japanese patients who visited a COVID-19 aftercare clinic for post-acute sequelae of COVID-19/long COVID. Cureus 13(10):e18568, . 2021[PMID: 34760415]
5)岡山大学:国内先駆けの「コロナ・アフターケア外来」開設から5年ー診療実績から見えてきたコロナ後遺症の課題と予後. 岡山大学(プレスリリース), 2026
6)大塚勇輝, 大塚文男:新型コロナ後遺症. 片岡仁美, 大塚勇輝(編):知ってるつもり? 知らなきゃいけない?—新語・新概念辞典, 総合診療 35(2):138-139, 2025
7)Nakano T, Otsuka Y, Otsuka F, et al:Transitional changes in fatigue-related symptoms due to long COVID; a single-center retrospective observational study in Japan. Medicina (Kaunas) 58(10):1393, 2022[PMID:36295554]
8)Lopez-Leon S, et al : More than 50 long-term effects of COVID-19 ; a systematic review and meta-analysis. Sci Rep 11(1):16144, 2021[PMID: 34373540]
9)Greenhalgh T, et al:Long COVID; a clinical update. Lancet 404(10453):707-724, 2024[PMID: 39096925]
10)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント編集委員会:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント 第3.1版. 厚生労働省, 2025
11)Yamamoto Y, Otsuka Y, Otsuka F, et al:Utility of serum ferritin for predicting myalgic encephalomyelitis/chronic fatigue syndrome in patients with long COVID. J Clin Med 12(14):4737, . 2023[PMID:37510852]
12)Hagiya H, Otsuka Y, Otsuka F, et al:Relevance of complement immunity with brain fog in patients with long COVID. J Infect Chemother 30(3):236-241, 2024[PMID:37866620]
13)Matsuda Y, Otsuka Y, Otsuka F, et al:Symptomatic characteristics of hypozincemia detected in long COVID patients. J Clin Med 12(5):2062, 2023[PMID:36902849]
14)Yamamoto Y, Otsuka Y, Otsuka F, et al:Detection of male hypogonadism in patients with post COVID-19 condition. J Clin Med 11(7):1955, 2022[PMID:35407562]
15)Soejima Y, Otsuka Y, Otsuka F, et al:Late-onset hypogonadism in a male patient with long COVID diagnosed by exclusion of ME/CFS. Medicina (Kaunas) 58(4):536, 2022[PMID:35454374]
16)Otsuka Y, Otsuka F, et al:Possible involvement of hypothalamic dysfunction in long COVID patients characterized by delayed response to gonadotropin-releasing hormone. Int J Mol Sci 14;27(2):832, 2026[PMID:41596479]
17)Mese O, Otsuka Y, Otsuka F, et al:Clinical evaluation of oxidative stress markers in patients with long COVID during the Omicron phase in Japan. Antioxidants (Basel) 30;14(9):1068, 2025[PMID:41008975]
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大塚 勇輝(おおつか ゆうき)
岡山大学病院 総合内科・総合診療科 助教
2018年に岡山大学医学部を卒業後、同大学病院での初期研修を経て、総合内科・総合診療科に入局。総合診療医として研さんの傍ら、2022年に博士課程を修了、同年より現職。倦怠感やMUSを興味の中心においた診療と、企業や基礎医学分野との共同研究に加え、教育医長として学生・大学院生の教育・指導にも積極的に取り組んでいる。医学博士。総合診療専門医・特認指導医。
【参考図書】

『総合診療』2026年2月号
特集「COVID-19罹患後症状の実態ー現場の医療者はどう患者に向き合っているか?」
Editorial:COVID-19罹患後症状(long COVID)に向き合う医療者へ(片山皓太 、徳増一樹)
『総合診療』2022年11月号
特集「不定愁訴にしない“MUS”診療—病態からマネジメントまで」
Editorial:本当にmedically unexplained?(片岡仁美)
『総合診療』2020年7月号
特集「その倦怠感、単なる『疲れ』じゃないですよ!―筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群とミミック」
Editorial:医療者へ疲労を診る、わかることの難しさ(片岡仁美)