【エントリーNo.7】井原拾得|「入院不要」と説得30分…ナースの一言にご家族が秒で納得した理由

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エントリーNo.7井原拾得(大阪大学大学院医学研究科 老年・総合内科学 招聘教員)


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「病院はホテルではありません」

ふらつきと高血圧で救急搬送されてきた患者さんとご家族の対応にあたっていた時のことだ。患者さんはご高齢かつ独居で、ご家族は「心配だから入院させてほしい」と訴えた。

しかし、医学的に入院適応はない。当時まだ若手だった私は、「病院はホテルではなく、医療行為の必要がない方は入院できないのです」と検査結果と理屈を並べて、30分にわたり必死に説得を試みた

トラブル寸前の事態となり、ご家族が「可哀想に…」としぶしぶ患者さんを連れ帰ろうとしたその時、救急の看護師が点滴を抜きながらポツリとこう言った。

「入院するほうが不便だし、もっと可哀想なんじゃない? 入院の必要ないって言ってもらえて、よかったね」

するとご家族は「やっぱりそうだよな」と、私の30分の熱弁より遥かに深く納得されたのだ。まさに「なんでやねん!」と叫びたくなる敗北感だった。

看護師の一言は何気ないものだったが、「可哀想」と案じるご家族の不安や迷いにそっと寄り添い、その心の隙間を埋める“最後の一押し“になったのだと気づかされた。

私の言葉は、ご家族の「感情」にピントが合っていなかったのだ。ご家族が求めていたのは、医学的な正論よりも、感情のピントに合った言葉だったということを痛感した。

これが私の転換点となった。この経験から私は、医学的情報を羅列するのではなく、患者さんやご家族の「感情」に配慮した一言を添える重要性を学んだ。

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