第5回 「孤立」と「孤独」はどう違うのか?

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執筆・撮影田中 夏実(みんなの北診療所 所長)

前回よりつづく

孤独な高齢者Mさんの例

 わたしたちが訪問診療に行っているMさん(80歳男性)は、犬を飼っていた。男性一人暮らしの部屋はお世辞にもきれいとは言えなかったが、Mさんは不自由な足で毎日犬の散歩に出かけ、一緒の布団で寝てかわいがっていた。
 犬もMさんを信頼していた。Mさんと同様、犬も高齢であったが、久しぶりにお風呂に入れた翌日、一緒に寝ていた布団の中で犬は冷たくなっていた。それ以来Mさんは一人である。

 Mさんが犬好きであることを知っているわたしたちは、訪問診療とは別に、保護犬を飼っている仕事仲間のケアマネジャーさんと犬を連れてMさんを訪れ、犬とのふれあいの時間をつくるようにしていた。「犬を連れて行くよ」と電話すると、Mさんは家の外まで出迎えてくれた。
 しばらく犬におやつをあげたり、なでたりしていると、Mさんは比較的短い時間で、「また来てね」と自分から切り上げた。煩わしかったり、退屈なわけではなさそうなので、こちらの迷惑にならないように、と考えているのかもしれない。犬たちもMさんに懐いていて、遠くからMさんを見つけると、駆け寄って行くようになった。


(「Mさん」は複数の人物を参考としています)

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