オスラリアンのことばをつなぐ米国見聞録(1)
Visiting Osler Scholar体験記①―「脳の塵払い」の機会を得て

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八百 壮大(JCHO横浜保土ケ谷中央病院 総合診療科)


 ウィリアム・オスラー博士(William Osler、1849~1919)は優れた臨床医・医学研究者・教育者、そしてヒューマニストとして知られ、その格調高く深みのある言葉は誰からも愛され、世代を超えて語り継がれてきました。故・日野原重明先生(1911~2017)により創設された日本オスラー協会は2016年にいったん閉鎖されましたが、今後もさまざまな世代の医療者たちとオスラー先生の叡智や教育理念、ヒューマニズムの学びを深め受け継いでいくために、この秋、日本オスラー協会が復活に向けたキックオフの会を開催します(2025年11月8日予定、詳細はこちら)。

 その会でも報告をさせていただきますが、筆者は2025年3月17~21日、米国のテキサス大学医学部ガルベストン校(University of Texas Medical Branch:UTMB)のJohn P. McGovern Academy of Oslerian Medicineが主催するVisiting Osler Scholarの招聘を受け、医学生や家庭医療専門研修中のレジデントに教育講演をする機会を頂きました。また、その翌週にはカリフォルニア大学サンフランシスコ校(University of California San Francisco:UCSF)家庭医療レジデンシーの病棟診療や、西オークランドの貧困地区での診療所医療や路上生活者診療(street medicine)を視察しました。この小旅行の最後には、オスラー先生を敬愛し、日野原重明先生の友人でもあり、日本の臨床医学教育にも大きく貢献なさった偉大な総合診療医、ローレンス・ティアニー先生のもとを訪問してお話を聴く機会も得ました。
 得難い経験をした2週間は、米国のヘルスケアにAIを含むさまざまなテクノロジーが組み込まれ大きく進化していく現状を目の当たりにしながらも、混乱の続く世界情勢や米国内の実情のなかで、ヘルスケアの専門職として忘れてはならないヒューマニズムが、個人あるいは組織としてどのように発揮されているのかを見聞きし、省察するまたとない機会となりました。その見聞録をこれから4回にわたって報告します。

 

 
UTMB最初の校舎Old Red(Ashbel Smith Building、1891年竣工)の前にて。

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