第30回 皮膚軟部組織感染症の起因菌を同定するのは難しい

執筆:伊東 完(東京医科大学茨城医療センター総合診療科)
監修:岡本 耕(東京医科歯科大学病院 感染症内科・感染制御部)

 

Keywords:血液培養,スワブ培養,起因菌,定着菌

 

Q. 特記すべき免疫不全のない患者の褥瘡表面を拭ったら緑膿菌が出てきました。この緑膿菌をカバーするべきか教えてください! 

A. 臨床経過次第です。木だけでなく,森も見るべし。病変局所が改善している場合は,必ずしもカバーする必要はありません。

 

第27回第29回では,蜂窩織炎など皮膚軟部組織感染症の起因菌について論じました。そうすると,こういった皮膚軟部組織感染症では起因菌が判明するのが当然であるかのように錯覚してしまうわけですが,実際のところはそこまで容易でもありません。起因菌の同定で容易に思い浮かぶ方法として,血液培養検査が挙げられます。血液はいわゆる清潔検体ですので,例えば蜂窩織炎の患者の血液から細菌が検出された場合は,その細菌が起因菌であろうと考えるわけです。ところが,実際に血液培養検体から細菌が検出されることは多く見積もっても20%と比較的稀です注1。したがって,血液培養検査で起因菌を同定できるケースはさほど多くないというのが現状です。

 

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