【第20回】エラー症例5 左肩痛ケース
2)診断の転換点とシステム要因(坂口公太)

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執筆:坂口公太(島根大学医学部附属病院 総合診療医センター)

突然発症の左肩痛で救急搬送された66歳・男性。初期診断では急性冠症候群が疑われたが、患者の経過とともに異なる病態が明らかになっていく。左肩痛という一見典型的な症状が、どのように診断の転換点を迎え、最終的な正診断に至るのか。
本稿では、その診断過程を詳細に検討し、エラーが生じた背景について掘り下げる。

 

■Case(つづき)

 患者は、経過観察の入院後も左肩痛を訴え続けていた。初期検査で心筋梗塞大動脈解離の可能性は低く見積もられ、狭心症筋骨格系疼痛と鑑別し、経過観察と疼痛管理が試みられたものの、痛みは改善しなかった。患者が「先生、左手が動かしにくい」と新たな症状を訴えたのは、その約2時間後のこと。診察すると、左上下肢における軽度の筋力低下が出現し、左手指のしびれ感や新たな腰背部痛が出現していた。

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