執筆:佐藤 直行(社会医療法人かりゆし会ハートライフ病院 総合内科)
前々回、消化器内科外来を受診した患者(50代女性、腹痛・腰痛)を診察した卒後20年目の消化器内科医Aは腎盂腎炎と診断し、17時直前に内科入院のために当番医であった卒後4年目の総合内科専攻医Bにコンサルトした。前回、専攻医Bは膿尿と細菌尿が目立たないことに疑問を抱きつつも腎盂腎炎の診断を妥当と考えた。しかし、内科指導医CのCT読影によって十二指腸憩室の穿孔であることが判明した。なぜ診断エラーが生じたのか? 専攻医Bと指導医Cの振り返りは続く…。
■総括的振り返り❷―なぜ「十二指腸憩室穿孔」の診断が困難だったか?
指導医C ケースの振り返りを続けましょう。前回は、勤務終了間際の時間帯であることや他医師の診断があることといった「状況要因」のほか、陰性感情のような「医師要因」が、診断エラーの要因として考えられましたね。腎盂腎炎の診断については多少の違和感は覚えていたとのことでしたが、ほかの鑑別疾患の想起が難しかった理由を考えていきましょうか。