抑肝散(よくかんさん;ツムラNo.54)は怒りを鎮める漢方薬ということで、バルプロ酸ナトリウムのような鎮静薬というイメージを抱いてしまいがちですが、抑肝散の構成生薬(図)のうち、鎮静作用のある生薬は柴胡(さいこ)と釣藤鈎(ちょうとうこう)の2つのみで、その他は、当帰(とうき)・川芎(せんきゅう)〔血(けつ)を補う作用:生体内を循環する赤い液体〕と茯苓(ぶくりょう)・朮(じゅつ)・甘草(かんぞう)〔気(き)を補う作用:生命活動を行う根源的エネルギー〕で、漢方医学的な体内の循環物質(気と血)の不足を補う作用をもっています。そのため、抑肝散は未成熟な小児や虚弱な高齢者がよい適応となり、「虚弱な体質で神経がたかぶるもの」が適応とされています。
薬理作用では、グルタミン酸神経系の機能亢進を抑制する作用1, 2)やセロトニン神経系の調節作用3)により、感情を調節する作用が明らかになっています。


