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執筆:伊藤貴康(岐阜大学医学部附属病院 医師育成推進センター 助教)
後輩医師が迷っていたり対応が遅かったりすると、つい答えを教えたり急かしたりしてしまいます。本人に考えさせることが重要だとは思いますが、忙しい外来や病棟ではその余裕がありません。どうしたら成長につながる関わり方ができますか?
「自分の時計だけ」を見ていた朝
「早くして! 仕事に遅刻しちゃう。保育園に行くよ。」
あと5分で家を出なければ乗るべき電車に間に合わない、そんな朝でした。ところが我が子は泣いて自転車の後部座席に座ろうとせず、玄関先で座り込んでしまいました。なだめても説得しても動かず、最後は無理やり乗せて保育園まで走りましたが、道中も泣き叫び続けます。こちらの余裕のなさと怒りが伝わり、余計に逆効果だったのだと思います。
その日の夕方、迎えに行った帰り道に我が子がぽつりと「あさはごめんね」と言いました。本来、謝るべきだったのは私のほうだったのかもしれません。その一言で、朝の私が見ていたのは、我が子ではなく、自分の時計だけだったのだと気づかされました。同時に、胸が締め付けられる思いもしました。
時間がないと、人は相手を動かしたくなる
自分に余裕がない時ほど、相手を「早く動かしたい」と思うものです。出勤時刻が迫る朝、なかなか準備をしてくれない我が子。こちらの仕事がまだたくさん残っている中で、指示がないと動かない後輩や部下。その結果、イライラし、強い口調で言ってしまう。本当は成長を待ってあげたい、次につながるように伝えたい、と思いながらも、「自分でやったほうが早い」と、ついついすべてを準備したり、指示してしまうことはないでしょうか。
もちろん、自分自身も急かされる側になることがあります。外来を終えて夕方に病棟へ行くと、検査や点滴、処方のオーダーを急かされる。相手にも事情があるとわかっていても、急かされる側は余裕を失いやすいものです。そう考えると、自分が後輩を急かしている時の姿も見えやすくなります。
さすがに職場で泣きながら大暴れする医師はいないと思いますが、ふてくされる、いなくなるといったことはあるかもしれません。表情や行動には出さなくとも、内心は不満を抱えていることもあると思います。
忙しい時ほど、関わり方の“型”を持つ
こういう場面で問題なのは、単に時間がないことではありません。時間がないと、人は精神的な余裕を失います。すると、相手のペースや気持ちを見る前に、とにかく早く自分の思い通りに動かそうとしてしまいがちです。声は大きくなり、言葉は強くなり、感情が表に出て、待つことも任せることもできなくなります。その結果、相手はますます動きにくくなり、こちらはさらに苛立つ、そんな悪循環に入りやすいのです。時間的に余裕を作ることは非常に難しいでしょう。だから私は、時間がない時ほど、その場しのぎで関わるのではなく、関係をこじらせにくい“型”を持っておくことが大切だと思うようになりました。