【第3回】「動けない」のは、本人のせいだけですか?(伊藤貴康)

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執筆:伊藤貴康(岐阜大学医学部附属病院 医師育成推進センター 助教)

【今回の悩み】
研修医が受け身に見え、わからないことがあっても自分から質問に来ません。つい「やる気がないのかな」と思ってしまいますが、本人の意欲以外に、指導する側が見直せることはありますか?

 

おむつをなかなか卒業できない

 我が子は4歳9カ月の時点で、うんちだけはおむつでしていました。おしっこはトイレに行ってできるようになり、夜もパンツで過ごし、数回のおねしょをしたぐらいで、おむつに戻ることはありませんでした。一方、うんちにはトイレを避けるようになったきっかけがありました。便座に座ってうんちをしたときに、中の水がはねておしりに当たったことが嫌だったようです。本人も「おむつのほうが安心できる」と言って、家の外ではうんちをせず、家に帰ってパンツからおむつに履き替え、ようやく出す。そんな日々が続いていたのです。

 

できないのは、本人だけの問題か

 保育園の保護者会でもトイレトレーニングが話題にあがり、私たちも焦りを感じていないといえば嘘になる状態でした。それでも、トイレでうんちをするよう無理強いはしませんでした。子どもにとって、家庭は失敗や不安を受け止められる「安全基地」でありたいと思っていたからです。そうしながらも、私たちは少しずつ“そろそろ”を意識するようになります。

 そこで、子どもが先のことを思い描けるように、2つのことを伝えました。
 1つは、「おむつが外れたら、パパと2人で旅に行けるよ」という楽しみな未来。
 もう1つは、「今あるおむつがなくなったら、もう買い足さない」という生活上の区切りです。
 我が子は、自分でおむつの残数を確認し、「あと何日分あるか」を数えていました。そして、最終的には自分で納得し、最後の1枚を使い終えたその日から、すんなりとトイレでうんちをするようになったのです。

 後日、保育園のある保護者から、もっと早い時期からおむつのまま便座に座る経験を重ね、「トイレで排泄するのが当たり前」になるようにしていた、という話を聞きました。うちは「最後の1枚」という区切りで背中を押したけれど、その家庭ではもっと前から、安心して慣れていくためのステップを用意していたのでした。

 育児には、トイレトレーニングのように「よその子と比べて心配になる」「まだできないことに焦る」など、親が精神的に追い詰められやすいテーマがあります。ただ、うまくいかない場面をすぐに本人の能力や意欲の問題として捉えてしまうと、「なんでできないの?」「なんでやってくれないの?」と、子どもを責めるような関わり方に傾きやすくなります。子どもが何に不安を感じ、どうすれば試してみようと思えるのか。そこに目を向け、いつか自分でできるようになると信じて待つことも、育てる側にできる大切なことだと思います。

 

 「聞いてこない」には理由があるかもしれない

 職場でも、似たような場面があります。研修医や後輩医師が自分から動かず、わかっていないことがあるようなのに質問もしてこない。そんな様子を見ると、こちらはつい「やる気がない」「受け身だ」と感じてしまいます。けれど実際には、どのタイミングで、誰に、何を質問すればよいのかが見えていないだけかもしれません。あるいは、忙しそうな上級医に声をかけづらい、以前のやりとりで萎縮してしまった、質問したときに否定されるのが怖い、そんな事情があるのかもしれません。

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