第3回 犬は死を恐れるか? 人はなぜ死を恐れるか? 
―「死」と向き合う二つの生き方

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執筆・撮影田中 夏実(みんなの北診療所 所長)

前回よりつづく

愛犬を亡くした患者さんとの出会い

 2025年4月、東京都北区の生協北診療所に新しく赴任した私は、今まで勤務していた医師の患者を引き継いだため、ほとんど毎日初見の患者ばかり診ていた。初めて診る患者さんには、背景を知るために家族や仕事のことに加えて、「ペットを飼っているかどうか」を聞くことにしている。今後、北診療所で犬のプロジェクトを進めるための準備でもあるが、本連載の初回で述べたように、現代の日本の都市部において、ペットは「家族の一員」であり、「重要な他者」だからだ。

 先日診察した70代の男性は、半年前に15年間飼っていた犬を亡くし、「それ以来、眠れない。食欲がない。何もする気が起きない」と訴えていた。犬を自分の子どものように思っていた彼は、父親を亡くしたときとは比較にならない喪失感に圧倒され、抑うつ状態が持続していた。
 犬の寿命は、犬種にもよるが、およそ10~15年といったところだろうか。人の人生において10~15年は、思うよりあっという間に過ぎてしまう。犬を飼い始めたら、まずその死を看取ることを覚悟しなければならない。

今回の写真は動物園シリーズ。
動物園の動物はを考えて生きているのだろう。

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