【第16回】エラー症例4 腹痛ケース
3)なぜ「上腸間膜動脈閉塞」を見逃したか(窪田忠夫)

ブックマーク登録

執筆:窪田忠夫(沖縄県立中部病院外科) 

前回、「胃腸炎」の暫定診断で帰宅させた患者(89歳女性、嘔吐・腹痛)が、翌日に再度救急搬送され「上部消化管出血」を疑ったが、実は「上腸間膜動脈閉塞症」で、緊急手術の甲斐なく腸管壊死のため亡くなった。救急外来での初診を担当した2年目初期研修医Aと外科指導医Eの、今後の診断エラーを防ぐための総括的振り返りは続く…。

■総括的振り返り❷―主訴は「嘔吐」だったのか?

指導医E この患者さんは介護老人保健施設(以下、老健施設)に入所中で、職員が嘔吐に気づいて救急搬送されることになりました。初めにどのように考えましたか?
研修医A 特に頭痛は訴えていなかったのですが、何度か嘔吐したということで、まず脳出血脳梗塞などの頭蓋内病変を考えました。というのも、以前にコーヒー残渣様の嘔吐をきたした高齢者で、上部消化管出血を疑って慌てて内視鏡検査をオーダーしたら何も所見がなく、小脳出血だった痛い経験がありましたので。

続きを読むには
無料の会員登録 が必要です。

こちらの記事の内容はお役に立ちましたか?