執筆:松本 朋弘(上野原市立病院 総合診療科/内科)
2024年11月4~8日にかけ,東京都総合診療推進プロジェクト「T-GAP」メンバーの総合診療医と京都大学医学部の総合臨床教育・研修センターで構成された総勢7名のチームで,米国の医学教育・ホスピタリストシステムの実際を視察するため,コロラド大学医学部を訪れた。コロラド大学医学部は,米国を代表するホスピタリスト・教育者であるVineet Chopra先生がdepartment of medicineのchairを務める,米国の中でもトップクラスの教育施設である。本連載では,そこでの体験を4名の総合診療医のそれぞれ視点から,以下の4回に分けて報告する。
第1回 Mentorship Academyに参加して
第2回 ホスピタリストの柔軟な働き方とキャリアパスの実現―がん診療に関わる総合診療医の視点から
第3回 コロラド大学のホスピタリストと日本の課題―「市中病院」の総合診療医の視点から
第4回 「大学病院」の総合診療医から見たホスピタリスト
コロラド大学病院での回診後に
向かって左から筆者,ホスピタリスト,physician assistant,コロラド大学視察のメンバー(滝澤あゆみ医師)
「ホスピタリスト」という職能は,1990年代の米国で誕生し,今や医療システムの中核を担う存在として広く認知されている。入院患者の診療全般を専門としており,医療の質を高めるだけでなく,医学教育や病院運営の効率化にも寄与している1)。一方,日本の市中病院では,病院総合診療医が類似の役割を担うことが多いものの,ホスピタリストという専任の医師はまだ一般的ではない。
本稿では,米国コロラド大学で行われたホスピタリスト研修に参加した筆者らの経験とディスカッション,インタビューを基に,日本の市中病院で病院総合診療医として働く視点から「ホスピタリスト」の意義を考察し,日本の医療現場における可能性を探る。