執筆:坂口公太(島根大学医学部附属病院 総合診療医センター)
本Caseでは、初期診断で急性冠症候群を疑いながらも、患者の経過とともに脊髄硬膜外血腫(SHE)の診断に至った経緯を振り返ってきた。最終回では、診断エラーの背景にある「システム要因」と「認知バイアス」を整理し、実際の医療現場でエラーを減らすための戦略を探る。
■総括的振り返り❶―システム要因の影響
指導医B A先生、この症例では、主に救急外来の多忙さやコミュニケーション不足が診断エラーを助長しましたね。まずは文献をもとにシステム要因を整理してみましょう。
研修医A はい。私自身、診断の偏りや時間的制約があり、十分な鑑別診断ができませんでした。特に、システム要因に着目して書き出してみました。